水族館の水槽には何千トンもの海水が使われています.しかも,魚を飼育していると水は汚れていくので,随時新しい海水を追加する必要があります.どうやって多量の海水を安定して調達しているのだろう? という疑問がわいたので調べました.
沖縄美ら海水族館・串本海中公園
沖縄美ら海水族館は沖縄にある水族館で,海のそばにあります.
水槽規模は総水量約10,000m³で,沖合300m水深20mより導水管を用いて取水しているそうです.詳しくはここに記載があります.
また,串本海中公園もこの方式みたいです.詳細はこちら.下の写真のような穴から海水を引き込んでいるみたいです.
水族館を海の近くに作って,導水管を用いて取水するのが一番効率が良さそうです.実際,Google Mapで水族館の所在地を検索すると,以下のようにほとんどが海の近くにあることがわかります.
海遊館
海遊館には,太平洋水槽という目玉の水槽(5400トン)があり,これを含めたすべての水槽の海水は和歌山から輸送しているそうです.海遊館のブログに記載がありました.
水槽で使う海水はどこからくるの?
海遊館では、ジンベエザメなどを飼育している「太平洋」水槽(水量5400t)を中心に、たくさんの海水が必要です。
さて、この海水はどこからくるのでしょう?
残念ながら、海遊館のすぐ目の前の海は安治川という川の河口のため、海水中の塩分濃度の変動や濁りの影響で使うことができません。
そのため、和歌山県の日御碕(ひのみさき)沖の海水を、専用の海水運搬船で運んできます!
船で海水を運搬して使っているのだそうです.なかなか費用がかかりそうです.
海遊館の目の前は海なので,てっきり大阪湾の海水を使っているのかと思いましたが,塩分濃度の変動と濁りがあるため使えないのだそうです.
(海遊館の衛星写真 from Google Map)
せっかく海の近くにあるのに使えないなんてもったいないような気もします.しかし海水は天然の資源なので,安定した品質を維持するには和歌山県までわざわざ行く必要があるのでしょう.ここまでしても大阪南港に水族館を作ったのは,アクセスがそれなりによく集客力が高いからでしょう.
京都水族館
京都水族館は100%人工海水を使っているのだそうです.
人工海水製造システム
水槽の水は、海水の成分を水に溶いたものを使用。人工海水を使うことによって、タンクローリーで港から海水を運ぶよりも輸送にかかるエネルギーを削減することができます。
人工海水はとても費用がかかりそうですが,入れ替える海水の量をできるだけ少なくすることで,費用削減を達成しているのだそうです.
節水型ろ過システム
高性能のろ過システムを組み合わせることで、1日あたり水槽水の約1%の人工海水を補給。きれいな水質を保つことができるため、給排水量を大幅に削減することができます。
京都水族館は京都のど真ん中にあるので,海遊館のように船で海水を運搬することもできません.したがって容易に調達できる淡水に塩を溶かして使っているのだそうです.
(京都水族館の場所 from Google Map)
ちなみに,東武スカイツリーのそばにある「すみだ水族館」も海から離れているために人工海水を使用しているのだそうです.こちらに記載があります.ここまで費用をかけられるのは,人工海水の低コスト化の成功と集客力がある立地条件のおかげで,利益が出るからだと思います.
まとめ
水族館は海のそばに作るのが海水の調達では有利ですが,アクセスがよい場所に作った方が儲かります.
また,設立年度を調べると,串本海中公園は1971年開業,沖縄美ら海水族館は1976年開業と歴史があるのに対し,海遊館は1990年に開業であり,京都水族館とすみだ水族館は2012年に開業したばっかりの新しい水族館です.
以上のことから,以前は高額だった人工海水が技術の進歩で比較的安価に製造できるようになり,京都水族館のように市街地ど真ん中に水族館を作っても採算が取れるようになった,ということなのだと思います.