YOUR TIME ユア・タイム: 4063の科学データで導き出した,あなたの人生を変える最後の時間術 を読了したので,要点をまとめます.
要点
時間術における3つの真実
- 時間術を駆使しても仕事のパフォーマンスはさほど上がらない
- 時間の効率を気にするほど,作業の効率は下がってしまう.
- 「時間をマネジメントする」という発想の根本に無理がある.
4×4 時間間隔タイプ
最初にこちらにアクセスして,時間感覚タイプテストを実施します.予期と想起について以下のように分類されます.最初の文章はこちらで読めます.
予期
未来に対する時間感覚の分類.
- Type A: 容量超過 いつも時間に追われて焦っており,キャパオーバー気味
- Type B: 禁欲家 しっかり計画を交えて作業をこなすが,人生の喜びを見失うことも
- Type C: 無気力 基本点なモチベーションが低く,いつの間にか時間が過ぎている
- Type D: 浪費家 楽な作業ばかりを好み,重要なタスクが進まない
想起
過去に対する時間感覚の分類.
- Type E: 自信家 難しい作業にも果敢に挑むが,時に自分を過信して失敗する
- Type F: 怖がり 計画を立てるのはうまいが,失敗や批判を恐れ着手を先延ばしにしがち
- Type G: 悲観主義 時間の見積もりが甘く,作業中は不安やイライラに振り回されがち
- Type H: 楽天家 時間の見積もりが甘いが何とかなると思ってしまい,同じ失敗をしがち
本書の目標
上記のテストで自分の時間感覚のずれの傾向を理解し,以下のような方法を利用して,好ましい感覚に調整することが目標となります.時間管理のノウハウは様々な書籍で紹介されていますが,本書はそれぞれのノウハウがどのような時間感覚の人に合うかで分類している点が斬新です.これにより,自分の時間感覚に合ったノウハウを見つけやすくなっています.
- 表面的な時間トラブルに対処する (第二章)
- 予期が薄すぎる
- タイムボクシング: 事前に割り当てた時間内で作業を終わらせる
- アンパッキング: 作業を細かなステップに分解する
- ビジョン・エクサライス: 深呼吸し,締切直前の自分を想像してから作業する
- ロールレタリング: 3年後の自分に手紙を書き,返信する
- デイリー・メトリクス: 長期プロジェクトを日単位で考える
- 予期が濃すぎる
- プレコミットメント: 「キャンセルできない休暇の予定を入れる
- リマインディング: 休暇の計画で10年後に後悔するか考える
- ビジュアライズ: 1年後の自分がどうなるか細かく想像する
- 機能的アリバイ: 「努力した後」「金銭的に得」なときに休暇を計画
- 予期が多すぎる
- SSCエクササイズ: 価値が低い仕事を特定し移譲または放棄
- エンゲージメント速度を上げる: 重要な問題を3つ選び集中の意思を確認する
- 熟慮プランニング: 「障害が起きたら熟慮すること」を事前に計画
- 障害プランニング: 想定される障害と対策を事前にリストアップ
- 予期が薄すぎる
- 深いレベルから時間感覚がずれる原因を取り除く (第三章)
- 想起の誤りが大きい
- タイムログ: 1日の行動・時間・評価を1週間〜記録する
- 他人に時間を見積もってもらう: 自分の作業の所要時間を他人に推測してもらう
- コピー・プロンプト: うまく時間を使っている人の手法を真似る
- 想起が肯定的すぎる
- タイムログ ・アドバンス分析: タイムログを仕分けして対策を立てる
- 誘惑日記: その日誘惑に負けた体験を1~2行メモする
- ごまかし率を計算する: 実際の時間見積もり時間=ごまかし率
- 想起リライティング: 過去の失敗の対策を考え,解決した自分を想像する
- 想起が否定的すぎる
- ネガティブ想起改善シート: 予想と実際の「困難度」 と 「満足度」を比べる
- マイクロ・サクセス: 1日の終わりに小さな達成+得たメリットを書き残す
- アドバイス法: 同じ目標を持つ人にアドバイスする
- リフレクション: 過去の成功体験を分析しその要因を活かす
- 想起の誤りが大きい
- 時間不足の根本解決
- 効率化に追われる感覚が消えない
- 生きがいチャート: 楽しい・必要とされる・稼げる得意の重なりを探す
- 文学に親しむ: 簡単に解釈できない文学を精読する
- 他人のために時間を使う: 小さな親切をまずは1週間続ける
- 時間に追われる感覚が消えない
- 退屈トレーニング: 退屈なタスクを1つ選び,1週間実行する
- イベントタイムで過ごす: 時計を禁止し,感覚に従って行動する日を作る *2
- 効率化に追われる感覚が消えない
感想
「時間感覚タイプテスト」のみーの結果は,「予期:Type A 容量超過」「想起:Type E 自信家」でした.
時間管理についての書籍の多くは,たくさんのタスクを短い時間でこなすという方向性に焦点をあてていることが多いですが,この本では,「SSCエクササイズ」に代表されるように,むしろ自分でやらなくてもよいこと,そもそも止めて良いことを洗い出すなどのアドバイスが記載されており,興味深かったです.実践してみようと思います.「タイムログ ・アドバンス分析」はやれば役立つのかもしれませんが,日々の作業量が増えるので採用するかは未定です.自己啓発本は最初の章にしか内容がないことがありますが,この本は最後の章が最も重要なので,少し詳しく感想を述べます.
生きがいチャート
もともと日本語ですが,どうやら英語に逆輸入され,非常に明確な定義がなされているようです.
Ikigai: Your Purpose and Reason for Being
- 自分が好きなこと
- 自分が得意なこと
- 自分が社会から必要とされること
- 稼げること
この4つを全て満たすことが "Ikigai" だそうです.日本語ではここまで明確な意味とは感じませんでしたが,このように明確に定義されることで,改めて自分の仕事や趣味に対する考えを見直すことができそうだと思いました.そして,好きなこと→得意なこと→社会から必要とされること→稼げること の順番に広げていくのが重要みたいです.順番が逆になると,自分の気持ちに無理が生じます.
退屈トレーニング
一見真逆に感じるかもしれませんが,現代は退屈が排除されてしまっているので,脳が時々退屈を感じる時間を意図して用意するべきなのだそうです.絵画を3時間眺めるのがとてもよいそうですが,少しハードルが高いので,まずは文学を活用するのがよいそうです.登場人物が何をしてどうなったけど,結局何が言いたいのかよく分からない小説が好ましく,代表的な作家が列挙されていました.三島由紀夫の小説を読んでみようと思いました.
これらのノウハウを紹介されても,直感的ではないので採用しにくいですが,自分の時間感覚のずれに対応するための方法だと説明されるととても説得力があるので,やってみようという気分になりました.