みーのいろいろ

管理者「みー」のブログです.思いついたことを思いつくままに.

これからの「正義」の話をしよう を読んだ

「これからの「正義」の話をしよう」という本を読みました.2011年に発売され話題になった本なので,10年も前の本です.

「1人を殺せば5人が助かる。あなたはその1人を殺すべきか?」正解のない究極の難問に挑み続ける、ハーバード大学の超人気哲学講義“JUSTICE”。

みーは小学生の時に,道徳の授業で「トロッコ問題」について意見を述べる授業を受けました.先生は以下のような問題を提示しました.

線路を走っていた路面電車が制御不能になり,前方にいる5人の作業員が死んでしまう.待機線に移動することはできるが,そこにいる1人の作業員が死んでしまう.どのような対応をするべきか?

同級生が意見を発表するのを聞いただけで,先生は特に総括するわけでもなく終了し,議論の目的が全くわかりませんでした.また,人が死んでしまう話を,架空の話とはいえ,考えなければならなかったことが苦痛で,嫌な思い出になりました.その後はこのような道徳の問題は敢えて避けてきました.

しかし,この本では,トロッコ問題をかなり示唆的に扱っています.

(前述のトロッコ問題と比較して,)線路を見渡せる橋の上に立っていて,横には電車を止めるのに十分な体重の人が立っている.その人を突き落として電車を止めることについてどう思うか?

助かる人を最大化する功利主義の立場と,誰かを目的のために利用するべきではないという義務論の立場が鮮明になりました.

(上記の2個の問題と比較して,)アフガニスタンを進行中のアメリカ兵士が,武器を持たない現地の人に出会った時に,タリバンに密告されることを恐れて,現地の人を予め射殺することについてどう思うか?

トロッコ問題は架空の話なので,結果を全て知っている状態で議論しますが,現地の人がタリバンに密告するかどうかが不確実であるという点で判断が難しい問題になりました.

現地の人を開放する決断をした後,現地の人がタリバンに密告して,タリバン兵に包囲され,仲間3人と救助に来たヘリコプターの16人が死亡したという結果になった場合,開放する決断をしたことについてどう思うか?

判断が間違っていたと振り返っても,その時に現地の人を射殺すべきなのかを問う,難しい問題になりました.このように,トロッコ問題にいくつかのバリエーションを追加し,それぞれの問題の差と,自分の感想を比較することで,自分の感想について思考するきっかけを与えています.

この本は,これらの問題について直接的に答えるものではありませんでしたが,どのように答えを探せばよいかを示していました.

正義と不正義,平等と不平等,個人の権利と公共の利益が対立する領域で,進むべき道を見つけ出すにはどうすればいいのだろうか.この本はその問に答えようとするものである.

小学校の授業が20年経ってやっとスッキリしました.みーの意見ですが,小学生はトロッコ問題を適切に扱えるほど人生経験をしていないと思うので,みーのように道徳の授業を毛嫌いする生徒を増やさないためにも,この問題はもっと成熟してから授業で取り扱うべきだと思います.