みーのいろいろ

管理者「みー」のブログです.思いついたことを思いつくままに.

消毒をせずに「まほうのみず」を使う矛盾した教育

最近こんなニュースを読み,がっかりした.

保健室、消える消毒液 流水で洗う処置が主流に 外科医「傷の治り悪くする」

学校で転んでけがをしたら、保健室で消毒をしてもらう-。そんな光景がなくなりつつある。外科医の中で主流となっている「傷口は流水で洗い流す。消毒液は使わない」という応急処置法が、教育現場でも浸透してきたからだ。ただ、家庭では「傷口にはまず消毒液」との認識が根強い。消毒液を使わない小学校では、児童や保護者を安心させるため、さまざまな工夫もなされている。

福岡市博多区のある小学校の保健室を訪れると、処置台に消毒液は一本も置かれていなかった。養護教諭によると、3年ほど前から原則として傷に消毒液を使わなくなったという。

代わりに置かれているのが「まほうのみず」。養護教諭は「流水で洗い流した後に、魔法の水で消毒をするように洗ってあげると、子どもたちは安心する」と話す。中身は、実は普通の水道水だ。低学年の子どもたちのために、半年前から始めた工夫という。

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西日本新聞 (http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/180912 [魚拓] より引用)

要約すると,消毒の医学的根拠がなくなりつつあるので,水道水で洗い流すだけにしているのだけど,子供が不安がるから,水道水を「まほうのみず」として使うようにしました.工夫しているでしょう.というニュースらしい.

意味が分からないのは,「医学的根拠がなくなりつつあるから消毒はしない」という科学的な視点があるにもかかわらず,「まほうのみず」というオカルトチックな解決策を導入している点である.消毒は意味がないから水道水を使うように,と上から言われたものの,現場では子供が不安がったのでやむなく工夫したのだろう.しかし,科学的に適切な理由で消毒をしないのなら,その理由を科学的に正しく子供に伝えて理解してもらうように努力をするのが教育だと思う.立場が一貫していない主張はその場しのぎにしかならない.

この矛盾も十分に残念なものなのだが,みーが最も残念に感じたのは,上に写真で示した「まほうのみず」のボトルである.どうやら水道水をボトルに汲み置きして使っているようだ.これは衛生的に安全なのか,非常に不安である.東京都水道局の資料を見てみよう.

水道水のくみ置きについて

くみ置きの方法 〜ふたのできる容器に口元まで〜

清潔でふたのできる容器(ポリタンク、ペットボトル、水筒など)に、できるだけ空気に触れないよう、口元までいっぱいに入れてください。くみ置きした水を飲むときは、雑菌が入らないよう、直接口をつけずに、コップなどに注いでから飲んでください。

くみ置きの保存期間 〜常温では3日、冷蔵庫で10日程度〜

直射日光を避けて涼しい場所に保管すれば3日程度、冷蔵庫に保管すれば10日程度、消毒用の塩素の効果は持続します(日付をメモして貼っておくと便利です。)。

東京都水道局 (https://www.waterworks.metro.tokyo.jp/press/h23/press110404-01.html より引用)

「まほうのみず」のボトルは写真で見る限り,空気に思いっきり触れる形状をしている.3日に1回は洗って中身を替えているのかも怪しい.こんな衛生的ではない水で患部を洗い流すのは,医学的に問題があるように思う.「まほうのみず」は実は「雑菌の水」だった,というオチは笑えない.

とはいうものの,今回の記事には以下のような素晴らしい点もあった.

消毒液を一切使っていない福岡市内のある小学校は、保護者に配布する「ほけんだより」で、消毒液をなぜ使わないのか説明して理解を促した。

「ほけんだより」で科学的に水道水での洗浄の正しさを啓蒙している小学校もあるそうだ.とても有意義な「ほけんだより」だと思う.このような適切な対応が徐々に広まっていって,日本全国の子供が怪我をしても安心して水道水で洗い流している光景が一般的になる日もそう遠くはないのだろう.