お酢は常温で液体なのに、なぜ「すしのこ」は粉末個体なのか?

「すしのこ」って便利ですよね.ご飯にささーっと振りかけて混ぜるだけで簡単に美味しい酢飯ができます.しかし,液体であるはずのお酢が,どうして粉末個体になっているのでしょうか?調べてみました.(早く結論を知りたい人は「以上をまとめると」まで読み飛ばしてください)

「すしのこ」はタマノイ酢という会社が発売している商品で,公式サイトには以下のように書いてあります.

タマノイ すしのこ 150g×5個

タマノイ すしのこ 150g×5個

ご飯に混ぜるだけでおいしい酢めし 酢めし用に固めに炊かなくても, 温めなおしたご飯でもおいしい酢めしに早変わり. 粉末のすし酢だから,あたたかいごはんに混ぜるだけで,ひとりぶんからでも手軽においしい酢めしがつくれます.レトルトパックのご飯でもOK.お好みの具材で,ちらしずしや海鮮どんぶりに.

品名: 粉末すし酢
内容量: 35g(約3合用),75g(5~7合用),150g(11~13合用)
賞味期限: 製造日より 2年(未開封)
保存方法: 高温多湿の所を避けて保存
原材料: 砂糖,食塩,醸造酢粉末,酸味料
アレルギー表示: −
http://www.tamanoi.co.jp/product/sushi.html (画像も)

原材料の中に,「醸造酢粉末」というものがあります.これがキーワードのようです.

また,別のサイトには以下のような記述があります.

しかしながら,開発は困難を究めた.最大の難関は湿気対策.酢の粉末化は可能でも,湿気を帯びたら固結化してダマになってしまい,使い物にならない.顆粒にする方法もあるが,御飯への浸透具合に問題が出てしまう.研究室では何年にもわたって実験が行われ,試行錯誤が繰り返された.結局,タマノイ酢は独自の製法で酢の粉末化に成功し,特許を取得.このノウハウこそが「すしのこ」の命でもある.
https://www.nttcom.co.jp/comzine/no077/long_seller/index.htm

この技術は特許になっているそうです.したがって特許で醸造酢粉末を調べれば少しはメカニズムが分かるのではないかと思いました.かんたん特許検索http://kantan.nexp.jp/で調べると,以下のものが見つかりました.引用します.

JP 2006-87389 A 2006.4.6
【発明の名称】    粉末醸造酢とその製造方法
【要約】
【課題】
酸度が高く,少量の使用により食品のpHを低減でき,味を落とさずかつ酸味を抑えて食品の日持ちを向上でき,醸造酢の粉末化も容易な粉末醸造酢とその製造方法を提供する.
【解決手段】
醸造工程を経て製造された酸度5%の醸造酢を,常圧下で60℃前後まで加熱し.酢酸成分を蒸発させ,回収して冷却することにより蒸溜・濃縮する.この蒸溜・濃縮作業を繰り返し行うことにより,醸造酢の酸度を51%まで濃縮する.濃縮した醸造酢30質量部を,無水酢酸ナトリウム70質量部に霧状に噴霧し,満遍なく均一に吸着させ,混合し,無水酢酸ナトリウムを撹拌することにより醸造酢を粉末化する.
http://kantan.nexp.jp/%E7%89%B9%E8%A8%B1/a2006087389/

つまり,濃縮して作成した51%酢酸溶液と無水酢酸ナトリウムを3:7の質量比で霧状に噴霧して付着させているそうです.酢酸ナトリウムという物質が登場したので,調べてみました.

 

酢酸ナトリウム (Sodium acetate, CH3COONa)
融点:324℃ (無水)
無色の結晶
http://en.wikipedia.org/wiki/Sodium_acetate

融点が324℃なので,固体ですね.無色の結晶だそうです.

次に,なぜ酢酸溶液と無水酢酸ナトリウムを混ぜると粉末個体になるのか?という疑問がわきます.このあたりはみーもよく分からないのですが,おそらくSodium diacetateみたいな状態になっているのではないかと考えます.

Sodium diacetate C4H7NaO4
It is a colourless solid that is used in seasonings and as an antimicrobial agent.
The salt forms upon half-neutralization of acetic acid followed by evaporation of the solution.
The species has no significant existence in solution but forms stable crystals.
酢酸ジアセテート  C4H7NaO4
調味料や防腐剤として使用される,無色固体である.この塩は,酢酸を半分中和した後,溶液を蒸発することによって得られる.この化学種は溶液中ではほとんど存在しないが,安定な結晶を作る.
http://en.wikipedia.org/wiki/Sodium_diacetateより一部引用 訳:みー

というわけです.ただ,51%酢酸溶液と無水酢酸ナトリウムが3:7の質量比ということは,酢酸と酢酸ナトリウムのモル比が,

(3 / 60.05 * 0.51) : (7 / 82.03) = 1 : 4

なので,厳密にSodium diacetateを作っているわけではなさそうです.

ちなみにSodium diacetateは,ご飯と混ぜるとご飯にある水分に溶け,溶液となり,酢酸と酢酸ナトリウム・3水和物に戻ると思われます.したがって,お酢の味がするのでしょう.

しかし,疑問点もまだたくさんあります.酢酸ナトリウムはどのような味がするのか?酢酸と酢酸ナトリウムを混ぜて乾燥させると本当に結晶が得られるのか?その結晶はどのような味がするのか?すしのことお酢はどちらが酢飯作りに適切なのか?などなど.このあたりの検証は機会があればまた後日やろうかなと思います.

以上をまとめると,「濃縮して作成した51%酢酸溶液と無水酢酸ナトリウムを3:7の質量比で霧状に噴霧して付着」するのがポイントのようです.お酢は液体なのでそのままでは常温で固体にはならず,酢酸ナトリウムという物質を使用することで固体にしているということですね.

それにしても,お酢を粉固体にしよう!と思い立って実践し成功した弓長可人さんはすごい人ですね.

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